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農業ジャーナリスト賞
 
概  要
 
規  約
 
選考委員
 
受賞作品
 
 問  合  せ
 
 

 農 業 ジ ャ ー ナ リ ス ト 賞 

 
 
第29回農業ジャーナリスト賞受賞作品


【福島民報社】紺野正人編集局報道部副部長(右から4人目)
【日本農業新聞】吉澤博英編集局営農生活部長(右から3人目)
【テレビ金沢】中崎清栄ディレクター、辻本昌平報道制作局制作部主任(右から1、2人目)
【熊本朝日放送】伊勢康之プロデューサー(左から3人目)
【NHK富山放送局】高橋隼人ディレクター(左から2人目)
【NHK宮崎放送局】鶴川百合奈ディレクター(左から1人目)

報道

 ベクレルの嘆き 放射線との戦い
  (第3部未知への挑戦)

福島民報社
 

 原発禍の中で苦闘する農林漁業者の思いが伝わる秀作。放射性物質の深刻で悲惨な現状が、情報が制限されている中にあっても地元紙でしかできない丹念で丁寧な取材で明らかになった。放射能の特殊性との終わりのない戦いを、検査機器開発に携わる研究者を追い、科学的なアプローチで伝えるなど興味深くまとめている。米の作付けを始めた農家、放射性物質の低減に向け、試行錯誤を続ける特産「あんぽ柿」や原木シイタケの生産者などの取材を通して消費者に県産農産物に対する理解を促し、県内農業の再生を願う福島民報社が、社を挙げて取り組んだ思いが伝わる。県民紙ならではの企画を高く評価したい。応募作品(「未知への挑戦」)を含む連載企画全体を収録した「福島と原発2-放射線との闘い+1000日の記憶」を今春、出版した。震災と原発事故を風化させないための「県民の記録」としても価値がある。

 

 鳥獣害と闘う

日本農業新聞
 

 鳥獣害という農業、農村にとって深刻で、広く社会・環境問題でありながら、地味で単調になりがちなテーマを、被害の実態と拡大の原因、防止対策の問題点、狩猟体制が整う欧州のルポ、野生鳥獣肉(ジビエ)利用等の多面的な切り口からアプローチした力作。主に現地からの事例報告を中心に、被害を軽減するための対策を追求した。農業専門紙ならではの視点で、鳥獣害問題を真正面から取り上げたことが評価される。この問題をここまで取材し、まとめたのは前例がない。日頃のネットワークの広さと取材の総合力が発揮された。ジビエについて欧州での取り組みや地域資源・観光資源としての模索は、山村の新たな挑戦と受け止められる。長期連載企画だが読み応えがあり、毎回の写真も一目瞭然で、事の真意を伝えてくれるなど、単調にならないような工夫も見られる。実証データの図表も参考になる。

     
映像

 賑やかな過疎
  ~限界集落と移住者たちの7年間~

テレビ金沢
 
 
 

 「田園回帰」傾向が各地で見られる中で、若者の移住と定住過程を丁寧に描いた力作。集落の人々の変化は、長期の地道な取材によって初めて映像化できた。特に7年という時間をかけて追い続け、登場する人々の言葉を丁寧に救い上げ、そのひと言ひと言に若者の“生きる哲学”が感じられ、制作者の真摯な取材姿勢が表現されている。中山間地、過疎集落、限界集落という地味で重いテーマを重苦しく描くのではなく、移住者受け入れをめぐる村人と移住者の動きを明るく伝える工夫を凝らすなど、人間ドラマとしても面白く、タイトルにも好感が持てる。過疎地対策の切り札となる農業移住と地域交流の大切さを伝えたいという制作者の意図が十分に伝わる作品だ。

 

 世界を動かしたイタリアンシェフの夢
  -阿蘇「世界農業遺産」への歩み-

熊本朝日放送
 

 地産地消の料理の提供を通じて熊本の食と農の素晴らしさを発信する一人のシェフが、阿蘇の世界農業遺産(GIAHS)を目指す取り組みを追ったドキュメンタリー番組。民間の盛り上がりから行政も協力し、官民一体となって世界農業遺産受賞へと導いた経緯が分かりやすく伝わった。シェフの熱意から人の輪が広がり、行政を乗せていくという形は、これまでと異なる可能性と地域の力の育て方を示していて興味深い。シェフの目を通して地域を守る取り組み、地域の人々の深い絆と熱い思いを伝える番組としての完成度は高い。クールジャパン成功の方程式を見た感がある。関係する全てのプレイヤーを生き生きと描いている映像は美しい。挫折を超えて認定を得たくだりもドラマチック。

 俺は犠牲者なのか
  ~富山 兼業コメ農家の今~

NHK富山放送局
 

 集落営農、兼業農家の現実と悩みを、集落構成員の多様化、「地代と労賃の対抗」を軸にリアルに描き、国内農業の本質的な問題に迫った硬派のドキュメンタリー。番組冒頭の営農組合専従者の本音のつぶやきが印象的。とかく優秀な人材による農業法人経営が脚光を浴びる中で、今まであまり表に現れない農村集落の大多数の兼業農家による米生産の現実と苦闘を描いたところが際立つ。基盤整備が整った水田を、地域の誰がどうやって維持していうのかを突きつけられ、考えさせられる。独自性と訴求力の高い作品で、農業政策を一方的に「敵」にしていない描き方も、易きに流れていないものとして評価される。カメラワークは巧みに人間の表情を押さえ、落ち着いたナレーションも良い。

 

 ガチアジア「和牛vs.WAGYU」
  ~アジア 牛肉市場をめぐる攻防~

NHK宮崎放送局
NHK福岡放送局
 

 豪州産「WAGYU」の実態を中心に、NHKならではの国際的スケールを駆使した圧倒的な取材力で追跡、検証した力作。構成も内容も分かりやすく、広く視聴者に見せる工夫がなされている。過去にアメリカに流出した和牛の遺伝子を元に海外産WAGYUが生産され、多くの国々で急速に拡大している。牛肉は国産農産物輸出拡大の切り札と期待されてきた中にあって、「美味しいものを作れば売れる」という考えを見直し、現在の輸出戦略に警鐘を鳴らしたことの意義は大きい。自由貿易が進む中、遺伝子ビジネスが世界に広がり、日本の霜降り和牛がWAGYUとなり、その生産ノウハウも同時に流失している現実を踏まえ、知的財産権戦略のあり方をも考えさせられる作品だ。

   
  過去の受賞作品