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農業ジャーナリスト賞
 
概  要
 
規  約
 
選考委員
 
受賞作品
 
 問  合  せ
 
 
 

 農 業 ジ ャ ー ナ リ ス ト 賞 

過去の受賞作品
第34回農業ジャーナリスト賞受賞作品


【受 賞】
 
報道

 「サケの乱」

岩手日報社
 

秋サケの不漁の原因を地球温暖化だけではなく、様々な要因を多角的に追究し、丁寧な取材を通して水産業が抱える構造的問題を提起した労作。「サケはなぜ戻ってこないのか」を出発点にして、まず地域の実態を掘り下げ、ふ化放流事業への依存体制の問題点を突く。とりわけ、サケ以外の魚種、県外、国外(ロシア)にまで取材範囲を広げて解決策を模索し、全8部43回の連載に及ぶ企画力、取材力に圧倒される。連載がきっかけで、秋サケ漁が盛んな宮古市と共催でシンポジウムを開催したほか、連載記事が小中学校の教材として活用されるなど、読者の反響も多く、県民が自らの地域を考える契機ともなった。大型グラフィックを用いた特集紙面展開も目を引き、文章も読みやすい。「秋サケは岩手の作り育てる漁業の根幹」(記事)であり、なんとかしなければ、という記者の思いが伝わってくる。

     
出版

 「移住者による継業 農山村をつなぐバトンリレー」

筑波書房
 
 
 

若い世代の「田園回帰」が広がる中、就業でも起業でもない、地域のなりわいを世襲ではなく移住者などの第三者が引き継ぐ「継業」という新たな動きを的確に捉え、農山村に共通する課題の解決方法の一つとして提唱したことが評価される。本書は新しい事態を時代性とともに切り取った調査報道としても優れている。継業を地域ぐるみで実践した現場の事例紹介も興味深く、「継業」の背景にあるものをきちんと考察している。地方移住との違い、地方での起業の違いが図式化されており、理解しやすい。「地域のなりわいを地域全体の資源、宝と捉え直し、残していく継業の取り組みは、地域づくりの新しい挑戦」「継業は地域経済と地域コミュニティ再生への取り組み」「継業は農山村再生の方向性と合致する」という視点にも共感を覚える。地域活性化の神髄に迫る新たな提案は、今後の政策展開にも結びつく。

   
映像

 「希望の光を種牛に託して~福島県川内村~」

NHK
 
 
 

NHK震災前、全国の有名ブランド牛と肩を並べる評価を得ていた福島牛。原発事故で約1700頭が安楽死処分され、大半の畜産農家が廃業に追い込まれるという絶望のさなか、川内村生まれの種雄牛「高百合」に故郷の未来を託して歩み始めた農家の、風評被害を乗り越え、苦闘の歳月と復興への思いを記録した感動作。福島の未来を見せてくれた。まず、畜産が出稼ぎからの解放であったことが描かれ、手放した人、安楽死させるしかなかった人、組合長、獣医師、牛に愛情を降り注ぐ畜産農家の気持ちが丁寧に描かれ、被災現場に寄り添った優れた作品となった。畜産農家の涙と笑いもきちんと映像化している。畜産農家の悲しみを乗り越えた思いが強く伝わってくる。種牛を通して地域の畜産の復興を願う姿が印象的。「高百合」が東北で初めて受賞した和牛日本一を競う「全共」(和牛オリンピック)から始まって「全共」で終わる構成も分かりやすい。

   
映像

 「やがて風景になる 若き木工職人の成長記」

岡山放送
 
 
  森林面積が村の96%を占める岡山県北の小さな村・西粟倉村。そこで、10年に及び、丹念に取材を続けてきたことが評価される。森林資源を活かし、木材に付加価値をつけて森林再生に貢献しようと挑戦するエネルギーに満ちた若者達の日常の姿と成長を追いかけた秀作の長期ドキュメンタリー番組だ。生産者と消費者の距離が近い林業・木材加工・家具製造の姿は、映像でなければ伝えられない。映像も美しい。とりわけ、学習机ツアーの追跡は貴重な映像(子どもの表情、山林所有者の対応等)で、番組タイトル「やがて風景になる」の意味もまた、映像は確かに伝えている。山主の応援、地域以外の人たちの応援風景は、地方の持つ価値に目を向けるようになった現代の人々の考えを反映させたもので、共感を覚える。地域への思い、林業を何とかしたいという強い思いが、とてもよく伝わってくる。日本の林業への問題提起にもなっている。
   
【特 別 賞】
 
映像 ETV特集「カキと森と長靴と」 NHK
  森と海が一つの生態系となって甦っていくことを伝えた“映像詩”という言葉にふさわしい優れたドキュメンタリー作品。全編通した美しい映像は、カメラマンの力量を感じさせる。映像番組として完成度が高い。音楽も美しい。さまざまな演出も秀逸。東日本大震災による津波被害で絶望の中、カキの養殖を復活させた漁師が主人公。漁師でありながら数十年にわたり、山に木を植える活動を続けてきたことで知られる主人公は、「森は海の恋人」と確信していた。ゆっくりした時間の流れの中、温和な表情で淡々と語られる主人公自身の奥深いメッセージが、美しい映像とマッチするなど、しっかりと作られている。しかも字幕がなかったことが番組の価値を高めた。カキを育てるために、自然と共生し、山や森を守る主人公の思いが詰まっている。生き物を育て、海や山と暮らす意味を問いかける。大自然と命の摂理が、教訓的ではなく表現されていて説得力がある。
     
出版 「イナカをツクル」 コモンズ
  10年間にわたり多くの移住相談を受けてきた著者が、その経験と各地の地域づくりの現場調査から、いま農山村で何が起きているかを的確に描き出した。「移住の方法」「農泊」「アンテナショップ」「ふるさと納税」「農地法」「インバウンド」など、多様な角度から取り上げており、切り口の幅広さが印象に残る。多くの事例から地方の取り組みに求められていることは何かを教えてくれる。見開き2ページ、左に資料等を配置、右に説明文を配置した構成も面白く、読みやすく見やすく整理された45項目は「テーマカタログ」になっており、どれも本質をついている。様々な地域を創る、地域活性化のヒントが詰まっている。著者は本書の副題を「わくわくを見つけるヒント」とした。「何もない田舎」から「可能性あふれたイナカ」への変化に、納得させられる。